光源波長 | 532 nm |
対物レンズ | 100倍 (NA=0.90) |
スペクトル数 | 13,200 (400×33) ※画像はその一部 |
測定時間 | 16分 |
上の画像は、CNT-FET(電界効果型トランジスタ)のラマンイメージです。電極間に合成されたCNTにおいて、さまざまな種類のRBMが分布している様子を高空間分解能(350nm)でとらえています。4種類のRBMのピーク強度分布を色分けし、分布の様子を高精細にイメージングしています。
※このサンプルは東京大学の丸山茂夫教授よりご提供頂きました。
微細部のRBMを簡単チェック
上のスペクトルは、ラマン画像内で任意で選択した領域(画像内の8個の色枠)内の平均ラマンスペクトルです。RBMピークの移り変わりを見ることで、カイラリティの異なるCNTが重なり合い、電極間に分布していることが分かります。RAMANtouch/RAMANforceのソフトウェアでは、ラマンイメージ内の任意の個所をクリック&ドラッグして指定することで、瞬時にその場所のラマンスペクトルを確認することができます。指定する色を変えることで、異なる場所のスペクトルを簡単に比較できます。
CNTのラマンスペクトル解説
右に示したグラフは、カーボンナノチューブのラマンスペクトルです。 カーボンナノチューブのラマンピークの代表的なものにRBM(Radial Breathing Mode)、Dバンド、Gバンドがあります。 それらのピークからCNTの直径やカイラリティ、欠陥などの情報を得ることができます。 以下に、それぞれのピークについて説明します。
RBM (Radial Breathing Mode)とは
RBMは、SWNTが直径方向に伸縮するモードです。 低波数側(100~300 cm-1)にピークが現れ、そのピーク位置ωRBM(cm-1)はSWNTの直径d(nm)と以下の関係式があります。 これを利用することで右図のように試料内に含まれるSWNTの直径を評価することができます。
カーボンナノチューブでは、励起波長が物質の光学遷移エネルギーと一致した場合に生じる共鳴ラマン散乱を観察しています。 そのため、カイラリティの異なるSWNTを網羅的に観察するためには、多くの励起波長を使って測定を行う必要があります。
Gバンドとは
炭素系の物質に共通の六員環の面内振動に由来する1590cm-1付近のピークです。 カーボンナノチューブの場合には、Gバンドの縮退が解け、G+とG-に分裂します(G+が CNT 軸方向の縦波(LO)モード、G-が軸に垂直な横波(TO)モードに対応)。 G+の振動数は、カーボンナノチューブの直径によらず1590cm-1付近に現れるのに対して、G-の振動数は直径の2乗に反比例して変化します。
Dバンドとは
欠陥に由来する1350cm-1付近のピークです。 GバンドとDバンドの強度比(G/D比)はCNT中の欠陥量の指標として用いられます。 G/D比が大きければ欠陥の少ないCNT、反対に小さければ欠陥の多いカーボンナノチューブだと判断できます。